考察とは名ばかりで感想?

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ジュエルペット てぃんくる☆ 第29話「イケメンバトルにドッキ☆ドキ!」

30話も既に放送されましたがここで29話の話です
シリアス回の間のギャグ回だったわけですが、なにげにこの作品の方向性が示されてます

私の息子がこんなにイケメンなわけがない

まずは今回のあらすじ


魔法学校のサルファー先生は先生になれたのが不思議*1とまで言われるヘタレ。ところが校長が見栄を張ってあれこれ嘘を書いた手紙を先生の母親に送ってしまったせいで、会いに来るという母親をごまかすために大騒動。この騒動をやって来た母親が収めるわけですが、この人「うちの息子がイケメンなわけないでしょう!」と端から騙されてませんでした

ここで「ダメダメですみません」と申し訳なさそうな先生に母、エカナイトはこう言います。「一生懸命ダメダメなのがサルファーなんだから」「それがあなたよ。自信をもっていきなさい」

…あれ?いい話のはずなんだけどこれでいいのか? 結局ダメダメなままなんですが

そんな疑問を視聴者に抱かせつつも、後日張り切って教室に入ってきたサルファー先生がつまづいて思いっきり転び、それを笑いながら見守る生徒達と転んだまま微笑み返す先生で29話は終わります

って思いっきりダメダメを肯定して終わってるじゃないですかー! ダメダメなミルキィホームズが聞いたらうらやましがりそうな展開だなぁ

サルファー先生がダメダメなのかダメダメでないのか、そのダメダメダメは(ry

よくある展開ならば「ダメダメだけど頑張ってるからよし!」みたいな結論が考えられます。ではなぜ今回このような展開になっていないのか考えていきましょう

サルファー先生が何故ダメダメなのかと言えば恐がりでヘタレなのとよく魔法に失敗するから。しかしサルファー先生に長所がないわけではありません。初登場の回では友達のいない沙羅のことを気にする熱心な面を見せていましたし、登場キャラの中では真面目な常識人です。魔法だっていつも失敗してるわけではありません。家事が得意という設定も今回明らかになりましたしね。

ところが今回はそういう面を描いたのはこの家事の話くらい。長所や成長は描かれないで冒頭からダメダメな部分が強調されていました。つまり「ダメダメでも頑張ってるからよし」という結論のための「頑張ってる」部分が描写されず、逆に「頑張ってダメダメなのがいい」という結論にそってダメダメな部分を描いた話になっているわけですね

なんとも恐ろしい結論です。「頑張ってる」からいいという意味は微塵もなく、「ダメダメなのが」いいと言ってます。うん、普通に考えてこれはおかしい。ダメダメなのは悪いはず

ところがこのアニメ、ダメダメでいいという結論になったのは実はこれが初めてではありません

これがゼロ年代アニメにおける父親だ!(違

問題の第11話「パパの会社でドッキ☆ドキ!」のあらすじはこう

魔法学校の変身魔法の授業で一人ずつ父親に変身することに。ところがあかりちゃんが持っているお父さんのイメージといえば休日に家でごろごろしてる姿。おかげでジャージに寝癖のお父さんに変身してしまいます。「イメージがちょっと違っちゃって」とすぐに変身を解いたあかりちゃんは、お父さんをよく観察して来週ちゃんと変身してみせるという課題を出されます

その後ギャグ回のどたばたがありつつも、お父さんの会社に行ったあかりちゃんは部下に慕われ仕事のできるお父さんのかっこいい一面*2を目にするわけです

こうしてあかりちゃんは1週間後、魔法学校のみんなの前でピシッとスーツを着こなしたお父さんの姿に変身する
…そう思っていた頃が僕にもありました

あかりちゃんの変身したお父さんは以前と同じ休日にごろごろしてるときの姿。ミリアやニコラ達に笑われてもあかりちゃんはこう言います。「いいのレオン。うちのお父さん日曜日はいつもこんなだけど、私お父さんが大好き!」

いやあ、これはすごい話ですよ。最初見たときは何故スーツ姿に変身してくれないんだお父さん可哀想とショックを受けたものですが、よく考えてみましょう。わざわざかっこ悪い姿に変身したのはあかりちゃんがお父さんのかっこ悪い面を受け入れたということ。普通はかっこいい面を見る→かっこいい面を肯定となるところを、この子はかっこいい面を見る→かっこ悪い面も肯定してるんです。しかもかっこいい面に言及することなく大好きと言い放てる。うおお、あかりちゃんなんて良い子なんだ。最高の父の日回じゃないか!

ダメダメでいいじゃない、人間だもの――あかり

仕事のできるお父さんが休みの日にごろごろしているのを受け入れたあかりちゃん、やる気はあって頑張ってるサルファー先生がダメダメなのを受け入れたエカナイトさん。さて今までどうもしっくりこなかった11話のラストが29話のおかげで理解できたというか、11話があったおかげで29話のラストを理解できたというか…

ですがこれでは何故「ダメダメでもいい」のかという根本的な説明*3がされていません。それは簡単、このアニメは「そういう話」だというだけのことです

ジュエルペット てぃんくる☆は主人公、あかりちゃんの成長を描くアニメです。そのためあかりちゃんは元々いろいろ残念な女の子。少し例をあげると

  • 引っ込み思案でなかなか友達ができない
  • 孤独を極端に恐れる
  • 夏休み真っ先にやることといえば積んでる漫画の消化

そんなあかりちゃんも開始から2クール経ち、27話*4などで描かれたようにずいぶん成長しました。とはいえ生来の気質がそう簡単に変わるはずもなく、21話や28話*5などのように欠点が表にでることもあります

性格がそうそう簡単に直るわけはありませんから、成長して致命的なレベルを脱しつつもまだまだ欠点の残るあかりちゃんで最終回になるはずです。ここで欠点のあるあかりちゃんが受け入れられるラストにするための前振りとしてこの11話と29話があるわけですね。いきなり「ダメダメでもいい」という驚きの結論を持ち出されたら今までの成長は何だったんだという話になりますから*6

最終回まで見てくれる皆さんはあかりちゃんがちょっとぐらいダメダメでも受け入れられますよね。11話のあかりちゃんや29話のエカナイトさんがそうしたように。そうさ! 大友はぼっちなあかりちゃんが好きなんだ! ささいなことでショックを受けたり勘違いで空回りするあかりちゃんがいいんだああぁぁぁ!!!

実はあかりちゃんの性格を改善する方法はあります。何たってファンタジーですから魔法で解決してしまえばいいのです。ジュエルスターになると3つ願いを叶えられるというのはうってつけですね。しかしここでもそういう展開にならない前振りがあります。7話は引っ込み思案を直す魔法のハーブティーの存在が明らかになりながらも、結局それを手に入れることは出来なかったという話です。その結果あかりちゃんは魔法に頼らず勇気を出して意中の男の子にお礼を言うわけです。これはラストに魔法に頼らないフラグが立ってますなぁ

他にもジュエルペットが性質上パートナーを基本的に全肯定することや30話の展開など最終的にあかりちゃんのダメダメな部分が受け入れられる伏線はいろいろあります

しっかしシリアスとギャグの両方楽しめる上にギャグ回でもこれだけ仕込んでくるてぃんくるは本当に面白いなぁ*7

*1:ここで縁故採用だとはっきり明かされるのが酷いw

*2:40歳ぐらいで大企業の部長とかどんなチート

*3:作中のキャラが肯定してる理由の説明じゃないですよ。書き手がこういうストーリーにした理由についてです

*4:「マンガ合宿でドッキ☆ドキ!」。クラスメートと学園祭で展示する漫画をかいた回

*5:21話ではミリアと沙羅からのけものにされてると勘違いする。28話では悪気はなくてもミリアを傷つけてしまう

*6:まあ、みんなこういう伏線は忘れてるでしょうからあからさまにダメダメ肯定という展開はないでしょうが

*7:いつか記事にするでしょうけどストーリー上あかりちゃんが父親と仲良くなる回は必須なんです。それをギャグ回で消化するとはw