先日の記事で「プリキュアのおもちゃ売上が上下するのに一喜一憂して話題にするような変人は少ない」みたいなことを言いましたが、世の中色々な好事家がいるもので、探せばそういうマニアックな話題がネットの片隅で語られていたりします
そして分野によっては公開情報から精度よく売上を予測することができ、更にはそこから株価を先取りできる業界があるようなのです
公開情報からの予測
ゲーム業界が、そういうマニアの知識で有利にトレードできる分野ではないかと気付いたきっかけがこちらの記事
記事のテーマは、仕掛ける時に考えた「ストーリー」に基づいて手仕舞いするべきだというもので、成功した裁量トレーダー*1がよく言っていることです(例)
この記事で僕がまず注目したのはこの部分
たとえばよ、いま赤字の株があって。時価総額は50億。でも来月に事前登録社数100万人を超えた新作ゲームをリリース予定
さて。リリースされたところセルランの初動は好調、いきなり30位。
で、その日の引け。過去にリリースしたゲームの特損で、赤字2億から赤字20億に急拡大w
やばい感じするよね。どうする?
答えはホールド。明らかに、この株を買ってる理由って新作ゲームがリリースされるからだよね
もう特損とか過去の話じゃんwどうでもいい。
これってつまり
- 事前登録者数からどれくらい黒字出せるか予想できて
- セルラン30位なら20億の赤字が追加されても十分打ち消せると予想できる
ということですよね
そこまで分かるものなのか〜と驚いたのですが、よくよく考えると似たような例にものすごく心当たりがありました。これってアマゾンランキングからBD・DVDの売上予測するのと似たようなもんじゃない!?
アニメのオタクのそのまた一部にしか分からないであろう話なので詳しい説明します。2000年代後半から2010年代中盤にかけて、アニメのBD・DVD売上はアニメオタクの話題の大きな一角を占めていました。何故ならオタク向けアニメの主な収益源はアニメ本編を収録したBD・DVDであり、その売れ行きが続編の有無をダイレクトに左右したからです。そして売上の予想とオリコンの発表する実際の数値*2に関して長らく語られるうち、1人のオタクがある仕組みを完成させました。アマゾンの人気ランキングを集計、補正して、精度よく売上を予測するサイトを
https://pripri.xyz/?c=specification *3
理屈は↓が分かりやすいでしょうか
まあアニメの売上で株取引するのは至難の業だと思いますが。何せ大半のアニメは複数の企業が出資する製作委員会方式。スポンサー社は同時に複数のアニメを抱えているのが普通で、多くが非上場企業ですから
こんな感じの予測はアニメオタクをやってるうちに他にも色々見かけました。4816東映アニメーションの決算から7832バンダイナムコHDの決算を予想する*4とか、シリーズもの映画の初動から最終の興行収入を予想する*5とか、映画館の席の埋まり具合を集計して興行収入を予想する*6とか。この辺りだとまだ株取引に利用できそうな気がしますね…
(追記)
ネタ元の方から早速お返事いただきました
表に出てないだけで実は集計したら高精度で売り上げが予測できて、みたいなケースはいっぱいあります。メディアで広告事業ならpvの推移取れるサイトでもいいし、オークションサイトならクロールして売上足し合わせてもok w
— かぶとーきょー🗼 (@kabukautokyo) 2020年2月4日
創意工夫した人が勝てるのが株って感じ😘
やっぱこういうネタは探せばあるもんだなぁ
シストレのストラテジーと「ストーリー」
話を株っぽい話題に戻しますか。仕掛けた時の「ストーリー」を元に手仕舞う。システムトレードで考えれば当然ですよね。仕掛けたのとは別のストラテジーの手仕舞い条件でエグジットとかないないw
逆にシストレだと、一見違う「ストーリー」の話でも同じ「ストーリー」としてストラテジーにまとめることができます。バックテストして統計的に有効性が確認できればいいわけですから。例えばIPO株に仕掛けるとかは、、、最初から「ストーリー」になってるなこれの場合。ともあれ、シストレでは大抵のストラテジーはチャートで仕掛けてチャートで手仕舞うわけですが、IPO株は過去のチャートが無いわけで、チャート以外も加味して買い、チャートも加味して売る、みたいになります
ちなみにシストレ脳だと元の記事の待ち合わせの例では、バックテストに同様の事例が十分な数含まれていて、10分待つなら帰る方が良い*7と分かっているのであればルールを遵守すべきです
逆に意味がないと分かっているのでやらないパターンもあるわけですが、例えば一律に○%で損切りするのも、ストラテジーによって機能したりしなかったりします
利確と損切りの違い
利確と損切りは本質的には同じものという話には頷くばかり。だって例えば「終値が5日移動平均を上回ったら翌日の寄り付きで手仕舞い」って条件で手仕舞いするのに、利確も損切りもないですよね? 単にその時利益が出たら利確、損失が出たら損切りになるだけです*8
ただ、「ストーリー」に基づく裁量トレードには、ある種の利確と損切りの区別があると思います。例として、元記事で挙げられている100点満点の「ストーリー」の例(↓)で考えてみましょう
ソフトバンクの今の株価がweworkショックで需給で下がって割安で、3ヶ月後の決算をきっかけに再評価されて時価総額●●●●まであがると思うので買います
この「ストーリー」のよくできているポイントは、その内容について「未成立」「成立」「破綻」のいずれの状態にあるか、確実に判定できるところにあります。例えば出来の悪い「ストーリー」の場合、いつになったら株価が上がるのか想定してないので、どの状態にあるか判断できず、利益が出ないのにだらだらと無為に保有を続けてしまい資金効率を落とすわけです。よく考えられたストーリーならちゃんと判定できるので、未成立→ホールド、成立→利確*9、破綻→損切り という判断がきちんとできます。ここでの「利確」と「損切り」は利益のプラスマイナスで定義されるものではなく、あくまで「ストーリー」の成否による分類であることに注意してください。上の例でいけば、時価総額が思ったより上がらなかったので「損切り」したけど利益は出ていることはあり得るのです。…やはり本質的には利確も損切りも同じようなものですね
ここで敢えて利確と損切りの区別をしたのは、つまり、「ストーリー」は破綻したときにそれがわかるようになっていなければならないということです。上で述べた悪い例の、期間を定めてないから破綻してないと強弁できるのもそうですね。まあ、3つの状態のどれか判別できるようにしろと言ったのと同じ意味ですが
ちなみにシストレの場合も手仕舞い条件の設定がおかしいと、短期のトレードのはずなのに手仕舞いできない銘柄が年単位で残るとかも有り得るので、大抵期間を区切って強制的に手仕舞いします。その方が資金の回転が良くなってリターンが増えるので
*1:明確なルールに則って取引するシステムトレーダーの対義語
*2:オリコンは集計に協力している店舗からの数値に独自の係数をかけて、集計対象外の店舗での売上を加味した数値を発表している。ちなみにオリコンが発表している売上はあくまで映像メディアの本数での値である
*3:実を言うとこっちは後継サイトであり、本家はいつの間にか配信サイトのランキング集計サイトになっている。何やら色々あったらしい
*4:東アニの方がバンナムより決算が早く、前者の版権別売上から後者の版権別売上が予想できる
*7:自分か友人が短気で10分以上待っていられないとか
*8:まあ手仕舞い条件によっては、成立する時必ず利益/損失が出てるやつも多々ありますが。+10%に指値しといて利確するとか