というわけで、プリリズで何が変わったのかという話を、プリリズ以前はどうだったのかという話を軸に進めたいと思います
狭間の年の豊作
いきなり話が横にそれますが、10年前の思い出話をしましょう。プリリズが始まる直前の2010年度*1、女児向けアニメのラインナップは次の通りでした
- ハートキャッチプリキュア!
- ジュエルペット てぃんくる☆
- たまごっち!
- 極上!! めちゃモテ委員長
- 夢色パティシエール
- あにゃまる探偵 キルミンずぅ
- ひめチェン! おとぎちっくアイドル リルぷりっ
まず単純に数が多い!*2 そして普通に名作揃い! 2010年は女児向けアニメが大豊作の年でした
というわけで見る方としては充実した年なのですが、商業的には2年以上続いてるヒット作品が上から4作品と半分程度で、1年やって円満終了な単発企画*3が残りの3作品とどちらかというと多め。商売としては全体的には小粒な印象を受けます
何でこうなったのかと考えてみると、プリリズ以降のヒット作の売り方がまだ確立していなかったから、と考えられます*4
余談ですがこの頃はプリキュアが売上のピークを迎えていた時代。その背景には前年のフレッシュでの体制一新からハートキャッチでさらに売上を伸ばしたという内部要因もさることながら、脅威となる作品が不在だったという外部要因もありました。例えばプリキュアが受けにくい小学生をガッツリ抱え込んで、プリキュアの主戦場である未就学児にもターゲットを広げてくるような、そんな作品が
前プリリズ期における少女漫画原作アニメの衰退
そもそも2010年には小学生の人気をかっさらうような作品が不在だったのです。その一因として、少女漫画原作アニメの衰退が挙げられます。2000年代になると女児の間でアニメは小さい子が見るものという認識が広まっていったようで、少女漫画を読む層と女児向けアニメを見る層にミスマッチが生じました。これが企画上問題をもたらしたのは想像に難くありません
そもそも少女漫画そのものの衰退という問題もありました。90年代に比べて雑誌やコミックスの部数は減り続けているのです。ちなみに事情は少年漫画でも同様で、今やジャンプ本誌連載作品でもアニメが深夜は当たり前の時代になっています*5
こうして少女漫画原作アニメが衰退した結果、新しいメディアミックスの形態が現れるわけです。ちなみにの余談ですが、そんなプリリズ以降の時代においても、テレビアニメから少女漫画原作アニメが消えたわけではありません。TBSが朝アニメ枠を新設するにあたって声がかかった「プリプリちぃちゃん!!」、U局夜という新しい形態が広がるかと思ったけどそうでもなかった「12歳。」、普通に深夜アニメにするという少年漫画でよくあるパターンだった「さばげぶっ!」という例があります
プリリズ以降のメディアミックスのホビーアニメ化
さて、漫画とアニメで層がミスマッチを起こして少女漫画原作アニメが衰退したわけですが、それに対してプリリズ以降の作品では漫画もアニメもメディアミックスの一角という位置づけになり、ミスマッチが問題とならないようにしました。ここでポイントになるのは、従来の漫画→アニメが軸のメディアミックスに対して、プリリズ以降ではアーケードゲーム筐体のような核になるコンテンツが、漫画やアニメとは別にあるということです。これは男児向けで言えばホビーアニメのメディアミックスの形であり、つまり、女児向けアニメの主流がホビーアニメに移ったと言えるでしょう
もちろん、ここで「プリリズ以降」と言っても、プリリズより前の時代にホビーアニメ化したメディアミックス形態を持つ女児向けアニメがなかったわけではありません*6。あくまで、ホビーアニメ化の流れを決定づけ、主流に押し上げた立役者としてプリリズの名前を挙げています。実際プリリズ前の2010年にはまだ少女漫画原作アニメが複数あった一方で、プリリズ以降の少女漫画原作アニメは上で紹介した3作品くらいなのです
おまけ
昨日↓の記事を読んで「あー、何か女児アニメ史について一つ書きたいな」てなったので
前々から書こうと思ってた話を書きました
ところで↑の記事には「PURETTYは早すぎた」「2020年代のうちにもう一度K-Popからのアプローチがあるのでは?」とありますが、僕はその意見にメディアミックスの観点から否定的です。だってプリティーシリーズもアイカツもガールズ×戦士シリーズも、演者が歌う方向でまとまってきているので。まさか韓流アイドルに日本語で演じさせるわけにもいきますまい