数年前、僕が丁度投資を始めた頃に日本版401kがiDeCoになりまして、「投資のリターンは蓋を開けないと分からないけど、iDeCoは確定で20%*1儲かるから絶対やっとけ!」みたいな話が盛り上がりました。早速iDeCoを始めようと書類請求したものの、手続きが億劫で放置した挙句、「年間投資額の10%ぽっちをわざわざ他と別で管理させられる一方で、30年以上引き出せないとかないわ~」ということで結局やらなかったというオチ
ところが最近、せっかくだから何とか活用できないものかと色々考えてみました。結論は「アーリーリタイアするならさっさとiDeCoを始めるべき」
あ、記事の内容自体はサラリーマンの人も応用が利くので是非お読みくださいm( _ _ )m
(こちらはiDeCoのマスコットキャラクター、イデコちゃん)
(つみたてNISAのマスコットは知ってた*2*3けどiDeCoにもマスコットいたんだ…)
(画像は全国銀行協会のサイトから拝借した)
いきなり要点まとめ
普通に考えると老後まで資金が拘束されるiDeCoはアーリーリタイアと相性が悪いのですが…
ということで、実はアーリーリタイアしてることによる利点が滅茶苦茶大きいんです。そこで
- 受給10年前くらいまで待ってから本格的に利用することで、資金が固定される期間を減らす
- 退職所得控除はiDeCoに拠出した期間が長いほど増えるので、本格的に利用する前から最低額だけ払っておく
- この手法は受給時に制度が変更されているリスクを減らすこともできる
という手法を考案しました
この手法を利用すれば1000万円弱を元本保証で利回り3%越え(非課税)も狙えます
基本的な前提
まずは上記の手法の前提となるiDeCoについてのあれこれを説明していきましょう
(ここで参照しやすいようiDeCo公式サイトを貼っておきます)
NISAの仲間みたいな面してるもんだからiDeCoも非課税制度だとばかり思ってたんですが、こいつ受給するときに控除額超えると普通に課税されるんですね。利益じゃなくて受給額に。そりゃ拠出した全額が控除されるわけだよ! 分配金やスイッチングに際しての利益に課税されないのも合わせて、拠出した年の税金を受給する年に繰り延べられるというわけですね。それはそれで投資に回せる額が増えるので大いに有効ですが
ともあれ、iDeCoの給付金が課税対象であっても控除があるわけですよ控除! 控除の枠を超えない範囲で利用すれば実質非課税制度です。しかし、ここでiDeCoの2大問題点の一つ、制度変更リスクが立ちはだかってきます(2大問題点のもう一つは資金拘束)。今から数十年後に控除額がどうなってるかなんて全然分からないわけです(60歳で受給できるのかも分からない)。そこで先述の通り、本格的に利用するのは受給10年くらい前まで待って、受給時に制度が変更されている危険を減らします(資金が拘束される期間を抑えることもできます)。加えて、iDeCoに拠出した期間に応じて退職所得控除が増えるのは中々変更されないだろう*4と考えて、できるだけ早い時期にiDeCoに加入して最低額での拠出を始めます。ちなみに、例え受給時に全く控除が受けられないとしても拠出時の控除が受けられるのは拠出した時点で分かるので、税の先延ばし効果は確実です*5
控除額と節税効果の試算
ここから更に具体的に検討していきますが、万人向けの話をするにはiDeCoは複雑すぎるので、あくまで自分の場合での想定をしていきます。まあ参考にするならサラリーマンの人でも参考になる内容だとは思いますが
さて、現在の制度において控除を最大限利用するには、受取方法に一時金と年金を併用するべきです。前者に対する退職所得控除と後者に対する公的年金等控除の両取りができます。それぞれについて具体的に検討していきましょう
(ここで参考になるページを貼っておきます)
一時金での受取
まずは一時金の場合。退職所得控除は基本的に40万円×拠出年で、拠出が20年を超えた分については70万円/年になります。今のところは40万円/年以下のペースで拠出すれば全額非課税であり、つまりは年間の所得のうち40万円にかかる税金を圧縮できるわけですね。10年間続ければ400万円の所得を非課税にすることができます
ここで先述の、先に最低額の拠出を始めて後から本格的に利用する手法を考えてみましょう。自分は今33歳なので大雑把に35~60歳の25年続けるとすると、退職所得控除は40万円×20+70万円×5=1150万円になります。長く続けることでだいぶ控除額を増やせますね。ここで49歳までの15年間は最低額の6万円/年を拠出し続け、残りの10年間は拠出枠の81.6万円/年をフルで使うとすると、81.6万円×10+6万円×15=906万円なので、全て非課税にすることができます
もちろんこの数字は現行の制度での話なので、実際には受給できる年齢に近づいてからその時の制度を元に拠出額と期間を改めて考えるわけですが、数百万円を非課税にできるのは万々歳ですね。NISAなんてせいぜい600万円か800万円の利益分しか非課税にならないわけで(まあNISA枠以上の利益を出すのは十分可能*6ですけど)。10年*7で数百万円を確定で非課税にできるのは相当大きい
とはいえ、そもそも毎年81.6万円、計816万円も拠出するのかという問題がありますね。まず、年間の所得が81.6万円もない場合。年間の支出を50万円くらいで済ませられるのであれば、所得もそれくらいで十分なわけで、それを上回る額をiDeCoに拠出しても控除される額が足りないわけです。ここで自分はシストレで短期売買をやっているので、利益が上がった分はその年のうちに必ず所得に計上されます。なので、81.6万円を控除する余地は十分あるでしょう*8。次に、拠出して年単位で引き出せなくても問題ない資金がそんなにあるのかという問題。自分はメインのポートフォリオを必要額以上に大きくせず、それ以上は預金や個人向け国債で持つつもりなので、そこから移すつもりです。まあ上手く資産運用できていれば、50~60歳の頃には計816万円を拠出するくらいできるでしょう
思ったより資金に余裕がないか、そもそも制度が思いっきり変更されて退職所得控除が受けられませんとか一時金での受け取りはできませんとかなったら、諦めて拠出を止めます
年金での受取
続いて年金の場合。国民年金78万/年と合わせて20年間受給する*9と、iDeCoに使える公的年金等控除=32万円×20年=640万円となります。とはいえ国民年金の受給開始年齢や受給額は変わるとしか思えないので、控除額の規定以上に読めないところがありますね…*10
個人的には一時金で900万も控除できれば十分だろうという感じなので、制度変更により一時金の控除額が足りなくなった場合に年金を利用すればよいでしょう。一時金より手元に戻ってくるのが遅れますし
利回りを試算
具体的な想定ができあがったので、その場合に得られる利回りを内部収益率として計算してみます。想定しているケースをまとめると
- 35~49歳で月0.5万円(最低額)、50~59歳で月6.8万円(最高額)を拠出
- 毎年4月に前年の拠出により控除された還付金を受け取る
- 上記の還付金に関して税率は20%とする(よって50歳までの還付金は毎年1.2万円、以降の還付金は毎年16.32万円)
- iDeCo口座内での積極的な運用は行わない(定期預金で保有する*11)
- 60歳の年の5月*12に一時金906万円を受け取る
となり、↓のように計算すると
利回りは年率3.15%となります。数百万円を元本保証でこの利回り、しかも非課税とは。今の低金利時代においては破格ですね
運用商品の検討
iDeCoはそんなに積極的に運用しない方がよいです。減って*13控除枠の無駄が増えるともったいないので。まあ上手く運用できた場合は控除枠超えても普通に課税されるだけで済みます*14が。受給前に利確しても受給まで課税されないのも有利ですし*15
ところでiDeCoの定期預金もペイオフの対象です。1000万を超えないよう注意しましょう。特に同じ銀行に普通口座持ってる場合はそっちの残高も合わせて考える必要があります
個人的な方針
さて、下に書いたようにiDeCoの商品ラインナップを大雑把にチェックしてみたのですが、じゃあ自分がどういう商品を選ぶか考えてみると… 最低額で口座を維持してる時はマイナーなアクティブファンドや金(ゴールド)投信で遊んで、フルにぶち込む段階は定期預金や低リスクのバランスファンドで安定させるという方針になります。それにどうせなら他で保有しないような奴を買いたいですね*16
そもそも金(ゴールド)なんてポートフォリオの一部でいいんだから、iDeCoで積み立てるくらいが丁度いいのかもしれません。まあ株と相関低いのが利点でもあるので、株と組み合わせてリバランスしてなんぼかもしれませんが。そこはiDeCo口座内で株式ファンドと組み合わせることにしましょう。金投信が高い信託報酬で目減りするのをカバーできますし
各社の特徴
ここから先は完全におまけです。自分がどういう商品を利用しようか考えるために、各社がiDeCo口座に提供している運用商品をチェックした時のメモ書きです
SBI証券は中々のラインナップ*17。アクティブファンドも色々ありますね。ここでピックアップするのはラッセル・インベストメント外国株式ファンド。マイナーながら長期間にわたってそれなりの成績を収めています。iFree 年金バランスも、他ではあまり見ない割に面白そうなやつです。それと金投信があります
楽天証券にもラッセルの外国株ファンドがあって意外とメジャーな投信なのか??と疑問が湧いてきます。注目したいのは『投資のソムリエ』。そのうち他の記事で詳しく紹介すると思いますが、リスクを抑えた良いバランスファンドです。それとここも金投信がありますね
マネックス証券で注目は、あの有名な『厳選投資』ですね。国内大型株で指数を上回る成績を10年以上続けています。僕も絶賛保有中です。それとここも金投信を忘れずラインナップしています
野村証券は何だか知らないアクティブファンドがいっぱいありますね。注目は『厳選投資』のDC版と思われるスパークス・厳選投資ファンドです。野村DC運用戦略ファンドはリスクを抑えたバランスファンドですが、今一シャープレシオが…*18
みずほグループだとiDeCoの取り扱いはみずほ証券ではなくみずほ銀行になります。『投資のソムリエ』のリスク抑制型やターゲットイヤー型なんてものが有って凄い。しかも他では中々買えないレアもの
大和証券のラインナップは分かりやすいですねぇ。注目は大和住銀 DC外国株式ファンドで、長期にわたって好調な成績を収めています*19。あと中国株とかインド株とかロシア株とかブラジル株のファンドが目を引くんですけど、どれも成績が散々な…
ちなみに管理費用についてですが、
メジャーなところはどこも最安値なので気にする必要は全然ないですね
よもやま話
最後に、残りものな話題を
自分は就職した頃から個人年金保険に入ってるんですが、公的年金じゃないから受取時に控除の対象じゃないので、逆に控除の枠を圧迫しないので助かりますね。働いていた頃は投資を始めてもそっちが上手くいかなかった時の正に「保険」として保険料を支払い続けていましたが、アーリーリタイアした今となっては保険料が結構な額になるし、老後まで受け取れないしとデメリットが大きいので払い込みを停止する予定です。利率はどうせ定期預金よりはマシ程度なので、完全にiDeCoの下位互換ですね
ところで「さっさとiDeCo加入すべき」とは言ったものの、自分は損益通算でしばらく税金全部返ってくるので、拠出額分の税金圧縮する効果が望めないことから加入をしばらく待ちます
それにしても無職だからiDeCoに入るとき会社に書類出す必要なくて楽~
*2:このブログでワニーサ使いまくってるし
*3:ていうかマスコットキャラ無駄に複数いるつみたてNISA何なんだ。通常NISAとつみたてNISAで別にいるとかじゃなくて、つみたてNISAだけで2人(?)いるんだぞ
*4:拠出した期間に応じて控除が増えるのは、勤続年数に応じて退職所得控除が増えるのに基づいているので、ここが変更されるのはあまり考えにくい
*5:拠出額が控除されなくなったら拠出を止めればいいので。逆に言うと税を先延ばしできる総額は不確定ですが
*6:この10年でS&P500は数倍になっている。TOPIXだって倍以上
*7:NISAの場合10年だと下がってる可能性も相当ありますからね
*8:まあ毎年必ず利益が出てるとは限りませんが、シストレは一応年次で損失が出る可能性が低い様にやりますし、バイ&ホールドしてる分も15年以上積み上げた含み益が吹っ飛ぶことはそうそうないでしょう
*9:60~64歳は単独で受け取れるが、額は65歳以降と変えられないだろう
*10:例えば国民年金受給開始が70歳に引き下げられ、それまでの控除額が現行の国民年金受給開始前と同じ60万円/年とすると、60歳から10年受給で600万円控除となり、先ほどの例と同程度の額を半分の期間で回収できる
*11:利子は誤差程度なので考慮しない。手数料もとりあえず無視
*12:自分の誕生月が5月なので
*13:せいぜい10年を株で運用するとそりゃ減る確率も十分ある
*14:しかも退職所得は控除後の所得額を1/2にして計算するので実質税率半減
*15:その分、受給の際には強制利確ですが
*16:『厳選投資』や『投資のソムリエ』は他で買うからなぁ
*17:でも一覧がすっごく見にくい
*18:元々年率標準偏差が3%くらいなのに、更にリスクを抑えたマイルド版もあります。まあ3%が2.5%に下がった程度で何が嬉しいんだって話ですが