以前配当控除を利用した節税法を考案しましたが、幾つか難点がありました。主に
という2点です。どうしたものかと思っていましたが、マイクロ法人(資産管理会社)を利用して解決する方法を考え出しました。これで投資の利益にかかる税率20%を約1/3の7.2%に減らすことができます!
要約
- 配当は他の所得より税率を下げうる
- 配当株のつなぎ売りにより配当のプラスと同じだけ信用取引をマイナスにでき、ETFなどの利益を相殺できる
- 個人と法人でETFなどを両建てすることで、法人の利益を個人に移すことが可能
- 個人と違い法人はETFなどの損失をFXやCFDなどの利益と相殺できる
⇒投資の利益を全て配当として課税させ、低い税率を享受することができる
※ 更にマイクロ法人には社会保険料のコントロールなど様々な利点がある
マイクロ法人とは
今回説明する節税法の鍵となるのがマイクロ法人です。要は自分一人(もしくは家族数人)だけの会社で、資産管理会社だったり、個人事業主でやるような事業を法人化したり、FXのトレーダーが法人化したりするやつです
以前考案した節税法
今回の方法は以前↓に書いた「配当所得付替戦法」の改良版なのですが
どういう方法か簡単に説明すると
- 配当株を権利付最終日につなぎ売り*1する
- これにより配当所得に利益、譲渡所得に損失が発生する
- 発生した損失は他の譲渡所得と損益通算されるため、実質的に譲渡所得を配当所得に変換できる
- 配当所得は配当控除を利用することで実質的な税率を大幅に下げられる
という仕組み。更にFXやCFDなど、株と損益通算できないものに対しては
- ETFで日経平均を買い、CFDで日経平均を売る
- 日経平均が上がると前者に利益、後者に損失が生じる
- 発生した損失はCFDやFXの利益と損益通算されるため、実質的にFXやCFDの利益を株の利益に変換できる
(下がると予想される時は売りと買いを逆にする)(ある程度予想ができるなら他の株価指数や商品先物なども可)
という方法を編み出しました。しかし実際にやってみると……
問題点①:両建てで損失が発生
同じ原資産を参照するETFとCFDでも、全く同一の金融商品ではないので、どうしても損益にズレが生じ、相殺しきれないのです!*2
例えばCFDで10万円損失が出たのにETFの利益は8万円しか無いような状態。これでは節税できても結局2万円損してるので足が出てしまう。しかも狙ったのとは逆方向の値動きになることも当然あり、両建てなので直接的な損にはならないから大丈夫と思いきや普通に損することがあるのでリスクが高すぎる*3
問題点②:国民健康保険料が増える
配当所得に対する税率を減らすために配当控除を適用するには、課税方法として総合課税を選択する必要があります。一方で申告不要を選択すれば国民健康保険料の基準となる前年所得に加算されないため、逆に総合課税にした分は国民健康保険料が約10%加算されることになります。これでは配当控除を使っても減らせる税率は実質3%くらいしかない!
改良した節税法
この2つの問題点を、マイクロ法人によって解決します。まず、FXやCFDは法人で口座を開いてそちらで取引。それと並行して同じETFを売買します。例えば
- 個人で日経平均連動ETFを買い、法人で日経平均連動ETFを売る
- 日経平均が上がると前者に利益、後者に損失が生じる
- 発生した損失はCFDやFXの利益と損益通算されるため、実質的にFXやCFDの利益を株の利益に変換できる
(下がると予想される時は売りと買いを逆にする)(ある程度予想ができるなら他の株価指数や商品先物なども可)
はい。上で説明した文章をちょっと修正しただけですね。以前の方法は個人でETFとCFDを両建てしましたが、新たな方法では個人と法人でどちらもETFを取引します。同じETFを同時に取引することで、損益にズレが生じないわけです*4
そしてマイクロ法人で健康保険に加入するため、全体的な所得に左右される国民健康保険と違ってマイクロ法人から支払う給料で健康保険料が決まります。おかげで配当所得を総合課税にしても、その分が健康保険料に影響することが無くなるのです!
おまけとして、法人ならFXやCFDのような先物ジャンルだけでなく、仮想通貨やソーシャルレンディングなど普通の雑所得に分類される損益もまとめることができるので、使い勝手の幅が非常に広がります
その他の利点
さて、マイクロ法人を利用すると他にもいくつか利点があります
給与所得控除
収入が個人で資産運用するだけだと当然給料をもらってないので、所得税の給与所得控除を利用できませんが、マイクロ法人を介して役員報酬として受け取れば利用可能となります。55万円控除されるので、税率を20%とすると11万円還付されるわけですね
(それとネット銀行で給与受取口座の優遇があったりするので、その点でも給料もらえるのはお得)
欠損金繰越控除
個人だと上場株式や先物の損失を繰り越して、翌年以降に所得を目減りさせることができますが、ジャンルが決まってるしジャンル間で融通できないし繰り越せるのは3年だけ。ところが法人だと赤字(欠損金)を全部まとめて9年繰り越せます!
経費
個人よりも経費として認められる範囲が広いので節税しやすいです
(まあ会計が手間なんで自分はやりませんが…*5)
細々した覚え書き
最後に色々と覚えておきたい小ネタというかポイントみたいな話や、細々とした個人的な検討結果をメモしておきます
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給与所得控除55万円分は給料を出す。それ以上はマイクロ法人を赤字にして法人税を無くす以上の意味は無い(というか個人の側で税金取られる)
逆に黒字が残っても、急に給与を増やせないし、事前に決めた以上に出した賞与は損金算入できないので注意(初年度に30万くらい赤字を作っておいて、翌年以降調整しやすくしとこう)
社会保険料が最低となる75.6万(改定に注意)を超えないこと
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マイクロ法人への出資は資本金だけでなく役員借入金という手もある。マイクロ法人で取引しない時に借り入れの返済という形で資金を個人に戻せる
資本金も役員貸付金の形で個人に戻すことができる。利息を付けないと利息を減免した分が給与扱いで税金がかかるので注意。利息は多い分には問題無いので、100万を数ヶ月借りて雑に利息1万円とかすれば楽
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マイクロ法人で厚生年金に加入するのでiDecoの拠出上限が減る。退職所得控除を狙うなら小規模企業共済の方が最低額も最高額も融通が利くし予定利率1%でiDecoの定期預金より美味しい*6
小規模企業共済は個人の所得から控除されるので、その分は個人で利益を上げるべし
小規模企業共済には前納による割引がある
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今回説明した方法を応用して、個人の損失を法人に移せば損失繰越が有利になる(個人と法人で行ったり来たりさせれば繰越の期限を無限に延ばせる)
逆に個人の利益を法人に移せば、給与所得控除の枠余ってる時とかに有用
新NISAでNISA口座と特定口座の両建て*7による節税がより効果的になったけど、逆に動いた時が痛いな…(NISA口座の損失は通算できないので)
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法人住民税に均等割が7万あるので、この分は個人に比べて税金が増える。まあ給与所得控除で所得税を11万減らせるから確定でペイできるので問題無かろう
マイクロ法人で支払う社会保険料(最低額で済ませる前提)はうちの県だと(5515.8+16104)×12≒26万/年
国民年金保険料は約19.5万、国民健康保険料は5.6万以上*8なので、余計な所得で国民健康保険料が増えなければ同じくらい
法人で増える出費といえば会計ソフトや申告ソフトの費用だが、フリーウェイ経理Liteやクラウド円簿など無料ソフトで行ける
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両建てで法人から個人に利益を移すのには、買い持ちポートフォリオのヘッジに使う予定の資金を、ヘッジに使ってないときに使えば…*9
→信用取引のレバ3倍が限度なので、ヘッジの証拠金50万ではいかんともしがたい
(買いを現物にして買方金利節約なんて余裕無いので、金利安い証券会社使うべきだな)
今年のうちは買い持ちポートフォリオに回す前の資金を使えるが…
後は去年の損失繰越とか各種控除の枠が残ってる分にはCFDも使えるな
譲渡所得→配当所得みたいに確定で移せればなぁ*10
いっそマイクロ法人から配当出せばと思ったが(合同会社でも配当は出せる)、配当は損金算入されないから法人税がかかりむしろ損(手続きが面倒だし)
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譲渡所得から配当所得に移すのは、超短期取引しない時に証拠金250万を流用する。代用有価証券を利用して250万の資金で200万を両建てする
権利付最終日前日に現物買い100万と信用売り100万(証拠金50万)→権利付最終日に現物買い100万と信用売り100万(前日買った現物を代用有価証券とする)→権利落ち日に現渡
↑これならSBIで売買手数料を無料にもできる(2日かかるのが難点)
受渡日は翌々日なので代用有価証券にするには間に合わない!!
配当利回り5%とすると1回で配当金10万なので、100万節税するなら10回、300万節税するなら30回と、月に数回の実施でできる
打ち消す譲渡所得が100万なら12.8万、300万なら38.4万も所得税が減るので滅茶苦茶有用
どうせ1日なら買方金利も大した額じゃないけど、配当のためには現物じゃないといけないのが面倒だな
*1:現物買いと信用売りの両建て
*2:先物と現物だしね。まあCFDも現物の場合でも普通にズレるんですが…
*3:自分がやった限りでは運良く利益が出たりはしなかったので酷い
*5:基本は資産運用して給料出すだけ。他はそれに付随して社会保険料とか払うだけ
*6:予定利率といえば国民年金基金が1.5%と高いので公的年金等控除を狙うのに良さげだが、国民年金の加入者じゃないといけないのでマイクロ法人と併用できない
*7:これはマイクロ法人不要
*8:まあ所得が少ないと更に数割減らす措置があるが
*9:ヘッジしてないときは順張りで利益出るだろ
*10:これを個人と法人でやっても配当落ちの分でどっちに利益が出るか分からないので意味が無い