いちごちゃんと美月ちゃんの物語もついに決着がついて本当によかった劇場版アイカツ
この映画によって「アイカツとは崖登りである」ということが明々白々になってて面白かったんですよ
ということで以下ネタバレ
高低差とダイビング
美月ちゃんが裏主人公というかラスボス(2期までとは違った意味で)なので、美月ちゃんが「ここまで登っておいで」というシーンに始まると言っても過言ではない今作*1。
ここでいちごちゃんとの間に「高低差」が設定されていて「高低差」が作中で暗喩として機能することが提示されるわけですが*2、
そこで今作で高低差といえばやたらダイブというか飛び降りるシーンが多い!
- スカイダイビングで作戦会議にかえでちゃん登場
- バンジージャンプで遭遇するあかりちゃんと美月ちゃん
- 崖からダイブして近道するかえでちゃん、ユリカちゃん、さくらちゃん
- ヘリから飛び降りて登場するマリアちゃん
- 同じくヘリから飛び降りてカードを届けるユリカちゃん
じゃあ飛び降りることは一体何を表しているのか考えてみましょう
余談
「ここまで登っておいで」というシーン、典型的な演出ならべらぼうに高いところで言う台詞だが、今回美月ちゃんは普通のペデストリアンデッキみたいなところにいて普通に登れそうな感じがする。いかにいちごちゃんが美月ちゃんの高みまであと一歩に迫っているかがわかる
ところで事前特番だと作画ミスで美月ちゃんが浮いてたのよりによってこのシーンなのがもう「持ってる」としか言いようがない
解答編はラスボスの仕事
ラストに美月ちゃんが心情を吐露する場面が引退の理由的にもメタファーの種明かし的にもこの映画をまとめる解答編になっているのですが、飛び降りることが何を意味するか考える上で重要なのはトップアイドルであることに疲れ、その重圧から解放されたいと思っていたこと
ここで飛び降りることは上り詰めたトップから文字通り降りること、そしてその重みから解き放たれることに繋がります
だから引退を決めてオフを満喫する美月ちゃんはバンジーで飛び降りるのです
会場へ飛び降りてきたユリカちゃんが「これでクライマックスよ!」と叫ぶのも、飛び降りることの持つこうした「終わり」の側面が現れているのかもしれません
劇中劇は当然メタい
美月ちゃんが吐露した心情と並んで重要なのが生ドラマパート
劇中劇なので当然メタ構造を利用したメタファーになっています
飛び降りるシーンが多い今作においてこの生ドラマパートは終盤とにかくよじ登る!
アイカツにおいて幾度と無く描かれてきた崖登りですが、今回ほど過酷に描かれたのは初めてでしょう
- そもそも登ること自体がきつい
- 後ろからずっと追いかけられる/どんなに追いかけてもなかなか追いつけない
- 登ってもまだまだ上がある*3
- というか登ったと思っても更に上へどうにかして登らないといけない
- いつまで登っていればいいかわからない
- 高いところは風も強くて危ない
そして高低差を考えれば登ることはトップアイドルへ進むことのメタファー
つまりアイカツといえば崖登り!というより崖登りこそがアイドルとして活動すること=アイカツのメタファーなのです!*4
ここでアイカツの過酷さを描いたことで、後で美月ちゃんが語るトップで居続けることの辛さが伝わってきてすごくいいんですよ!
ここまでとことんアイカツの辛さを描いたのはテレビアニメではなかったことですし*5、美月ちゃんでも辛く感じていたというのは初めて明言されたと言えるでしょう*6
ところがこの生ドラマパートの終わりは登ってきた高みから飛び降りること=引退ではありませんでした
何と新たな登場人物が飛び降りてきて登場することで解決するのです
そう、飛び降りることは引退=退場を表すよりもむしろ登場を意味しています
そもそも
- かえでちゃんが作戦会議にスカイダイビングで来るのも
- 美月ちゃんがあかりちゃんの前にバンジージャンプで現れるのも
- マリアちゃんとユリカちゃんがヘリから会場へ飛び降りて出てくるのも
全部登場シーンですからね
これもトライスターの絆かもしれない
ここで最初にダイビングしたかえでちゃんに注目することで、飛び降りることの持つ別の側面を見ていきましょう
そもそもアニメ初登場シーンからしてスカイダイビングで視聴者の度肝を抜いた彼女ですが、このパフォーマンスはみんなを楽しませたくて自由な発想でアイカツするかえでちゃんらしさが現れています
ここでポイントを切り分けてみると
- スカイダイビングは自由な発想の産物
- スカイダイビングはみんなを楽しませるためのもの
まず前者。これは飛び降りること=自由=解放であり、上で触れた美月ちゃんがバンジーで飛び降りていたことに繋がります。引退を決めて重荷から解放されたオフの様子がバンジーをする美月ちゃんとして描かれているわけです。また自由であることは、かえでちゃんの例からもわかるように何ものにも縛られず自分らしさを発揮することに繋がります。自分らしさ。アイカツする上で重視されているものの一つですね
次にみんなを楽しませるという点。みんなが楽しくて自分も楽しいのがアイカツだということはこれまでアニメで描かれてきたことですね。つまり飛び降りることもアイカツなのです。登るのも降りるのもアイカツ! これは103話で崖登りもスカイダイビングも両方やってたのを思い出すとわかりやすいですね。そして引退を決意した美月ちゃんは自分がアイカツを楽しむことができなくなっていたという…
さらにみんなが楽しいということは人を笑顔にすること。つまり人助けに繋がります。これまで何度もアイカツで人助けしていましたね
そもそも映画で飛び降りるシーンも
- 作戦会議に助っ人としてスカイダイビングで登場
- カードを届けるためスカイダイビングで近道
- ヘリから飛び降りて登場し、生ドラマにオチをつける
- カードを渡すためヘリから飛び降りて登場
という風にいちごちゃんの助けになる行動ばかりです
ここでかえでちゃんとともに飛び降りるシーンが2回もあるユリカちゃんに注目してみましょう。ユリカちゃん最初のダイビングは既に単独でのダイビングをこなしたかえでちゃんに抱えられてのものですが、次にユリカちゃんが飛び降りて会場入りするときは一人でヘリから飛び降りています。テレビアニメでも描かれたかえでちゃんがユリカちゃんを手助けして導くという二人の関係性が現れていていいですね〜
結果カードを届けていちごちゃんを助けるミッションにおいて、崖をショートカットする際はかえでちゃんに助けられていたユリカちゃんが最後にカードを手渡すのは一人でできています
そして新世代登場!
最後にここまで飛び降りるシーンに触れなかったあかりちゃんです
既に書いたように飛び降りること=登場と考えればあかりちゃんのバンジーはアイカツの世界に飛び込むことと言えるでしょう
そしてそこであかりちゃんは美月ちゃんと出会います
同じくバンジーをしていても美月ちゃんはアイカツの世界から抜けだそうとしている。一方のバンジーはアイカツの始まりなのに対してもう一方はアイカツの終わりになっている。これは終わりは新たな始まりということでしょう。バンジーは落ちるだけでなく跳ね上がったりするものですからね
あかりちゃんが落ちてきたと同時に美月ちゃんは跳ね上がり、また高い位置へ戻っていきます。この出会いの結果最終的に美月ちゃんは引退をやめ、新たなアイカツをスタートするわけです
ところでこのバンジーの出会い、まるでロボアニメの空中戦みたいな構図でとても面白かったです