最近の暴落で、下落のダメージを抑えるレイダリオのオールウェザー(オールシーズン)ポートフォリオに改めて注目が集まってる気がするような? そんなオールウェザー(全天候)ポートフォリオにレバレッジをかけた、レバレッジドオールウェザーポートフォリオを提案している人もいます。でもそのポートフォリオ、さらに「レバレッジの効いたETF」を追加する余地があるような? というわけで、金鉱株ETFなどが使えるだろうと検討してみました
元ネタ
有名投資家のレイダリオは、経済には4つの「季節」*1、すなわち「好況」「不況」「インフレ」「デフレ」があり、どの「季節」でも資産を守って運用できなければならないとして、オールシーズン(オールウェザー)ポートフォリオを提唱しました
詳しい内訳は割愛するとして、特徴的なのはインフレヘッジのために金やコモディティをある程度保有するところ
ここでレバレッジドポートフォリオの第一人者である↓のブログに登場してもらいましょう
オールウェザーポートフォリオの株と債券の部分についてレバレッジをかけたポートフォリオが既に提案されています
でもこのポートフォリオ、金やコモディティにもレバレッジかけてみたくなりません? しかし残念ながら、国内の証券会社では金やコモディティのレバレッジETFは販売されていません*2。が、そこで諦めるのはまだ早い。「レバレッジの効いたETF」は他にもあてがあるんですよ…
金鉱株のレバレッジ
金ETFと並んで、金を採掘する企業の株式ETFである、金鉱株ETFが盛んに取引されています*3。この金鉱株ETF、金価格に連動するどころか、金価格にレバレッジをかけたような値動きをします。そのからくりを説明します
不動産会社の株を保有することで、その企業の持つ不動産を間接的に保有できるように、金鉱株を保有することで、金採掘企業が持つ金を間接的に保有することができます。まあ、その金は金鉱に埋まっている分がほとんどですが。ここでポイントなのは、埋まっている金を売却するには採掘する必要があり、コストがかかることです。例えば10万$の金地金があるとしましょう。この金地金に必要な金の採掘コストを5万$とすると、金鉱山の利益、すなわち埋まっている金の価値は5万$です*4。ここで金の価格が倍になったとします。金地金の価格は10万$から倍の20万$になる一方、採掘コストは関係ないので5万$のまま。すると金鉱山の利益は15万$になるわけで、つまり、金価格は2倍でも埋まっている金の価値は3倍!
よって金鉱株も3倍になるわけで、金価格に対して金鉱株の株価はレバレッジがかかってるわけです
金鉱株のレバレッジは何倍?
金鉱株にレバレッジがかかると言っても、レバレッジETFみたいに目標とするレバレッジがあるわけじゃありません。それなら実態を調べるしかないでしょう! ということでご登場いただくのが米国株クラスタ御用達のポートフォリオ・ビジュアライザー
ここで金ETFと金鉱株ETFのボラティリティを比べれば、その比が実質的なレバレッジと言えるでしょう。やり方は金ETF100%と金鉱株100%のポートフォリオを作って比較するだけです
標準偏差でいうと、金鉱株は金の37.8/17.6=2.15倍なので、約2倍のレバレッジがかかっていると言えそうです。まあグラフを見ると単純に2倍というわけでもないんですがね
青が金、赤が金鉱株ですが、レバレッジETFの減価みたいな劣後っぷりですね金鉱株。それにしたって、元が青の値動きとするとレバレッジETFはもっとリターン上げてそうですが
コモディティを原油で代替
金にレバレッジをかけられるとなるとお次はコモディティです。コモディティ、というか商品先物ときたら、金属や農産品のイメージが強いですが、実は原油や石油製品*5、天然ガスがかなりの割合を占めています
もちろん金も入っているので金ETFとは重複しますが、数%なので気にすることはないでしょう
ともあれ石油関連銘柄が焦点です。ここで参考になるブログを見ていただきましょう
アレンジしたオールウェザーポートフォリオで資産運用している方ですが、ここで注目したいのがコモディティの代わりにエネルギー株ETFを入れているところ。そこでピンときました。金と金鉱株のように、石油と石油採掘企業株の間にレバレッジが働いているのでは??
そこでコモディティETFとエネルギーセクターETFを比較してみました。コモディティはGSG、エネルギーセクターはXLEです。上記ブログのエネルギーETFは世界株のIXCですが、↓を参考にXLEにしました
果たして結果は…↓
それなら原油とエネルギー企業で比較してみましょう。原油ETFは日本の証券会社では多分買えないUSOです
うん。むしろ原油の方が1.5倍くらいボラティリティがありますね! どうやら原油は金ほどには採掘コストかからないらしい。液体だもんなぁ
というわけでレバレッジを効かせることはできませんが、減価のある商品先物ETFよりエネルギー株ETFの方がいいですね(青がGSG、赤がXLE)
まあ、最近エネルギーセクターはボロボロで、あんまり投資したくないような、むしろ逆張りの機会なような
現物資産ならREITはどうか
原油と採掘企業ではレバレッジを効かせられない… 他に何かないか? というところでREITを検討してみることにしました。そもそもコモディティはインフレヘッジの現物資産。現物資産なら、その代表格である不動産でいいんじゃないかという発想です
ボラティリティはREIT ETFもコモディティと同じくらいですね。なので後は日本でも買えるREIT3倍ブルETFを使えば…
ちなみに右下にちょろっと数値が書いてありますが、REITはコモディティより株価指数との相関が上がるので注意が必要かもしれません。まあ石油株と同じくらいですが
ポートフォリオの構築と検証
ではいよいよ、ここまで出てきたアイディアを使った全天候ポートフォリオを考えて、シャープレシオが向上できそうか検証してみましょう*6。ちなみにこれから試すポートフォリオは、どれもレバレッジを考慮した比率がだいたい元の株式:長期国債:中期国債:金:コモディティ=30:40:15:7.5:7.5になるようにしてあります
ではまず金を金鉱株に変えてみたものを見てみましょう
シャープレシオは1.13から1.06に…悪化してんじゃねーかw やはり金に比べて金鉱株は思いっきり劣後していましたからね。他のアセットの比率が高まってもカバーできないか。というわけで金にレバレッジをかける試みは失敗!
次はコモディティをエネルギーセクターに変えてみましょう
今度は1.13→1.22で成功だ! やはり先物の減価がなくなるのは大きいようです
なら今度は不動産 (REIT) に変えるとどうか
エネルギーセクターと比べてシャープレシオが1.22→1.24で若干改善! 近年不動産は右肩上がりですからね。レンジ相場のエネルギーセクターより良い
するとシャープレシオは1.24→1.18と悪化! レバレッジは減価するから駄目なのか…?
まとめ
というわけで、金を含むコモディティにレバレッジをかけて、全天候ポートフォリオを改良するという試みは失敗に終わりました。しかし、コモディティETFよりもエネルギーセクターETFやREIT ETFの方が良いという副産物が得られましたね*7。コモディティ15%をエネルギー7.5%+REIT7.5%にするとよさそうです