考察とは名ばかりで感想?

最近は主にゲーム(戦略系)と資産運用(FXで食ってくぞ!)

映画 グスコーブドリの伝記を見てきました

予想以上にがっつり改変入ってたなぁ

以下ネタバレ

原作と今作での大筋の違い

原作のストーリーは

冷害で主人公一家離散→残された主人公は苦労しながらもサクセスストーリーを歩む→とうとう同じように苦労している人々の助けになる仕事を成し遂げる→そこに再び冷害が→これ以上自分のような境遇の人を生み出してはならない!と、主人公は命を投げ出して人々を救う

なのに対して、今作は

家族を失い一人残された主人公が死に場所を見つける物語

になっている

原作の展開で興味深いのは、主人公ブドリと再開した妹ネリに息子が生まれたこと。自分を犠牲にしようとして、前途ある若者が犠牲になるべきではないと止められたときに、ブドリは自分の次の世代は更に前途有望であるというような発言をしている。この発言には甥の存在が大きいのではないだろうか

一方今作のネリはさらわれてそのまま死んでしまったと思われる。妹とだけではなく赤ひげとの再開も描かれることはなく、雨に混じって肥料を降らせるというブドリ最大の仕事もない。原作は意外と明るい雰囲気が大半を占めるのに対して、今作はイーハトーブ市にたどり着いてからずっと空は曇り空で暗めの雰囲気が漂う。さらに今作のブドリはあの世を象徴する夢をたびたび見る。ネリがさらわれて以降、心は半分死んでいるようなものだったのではないだろうか。ブドリにとって人さらい=死神であるから、彼が死に場所を見つけた時人さらいが迎えに来る

元々あっさり目で終盤特にさくさく進む原作*1ではブドリの自己犠牲はなかなか唐突なのだが、今作では筋を変えたことで*2「そりゃこいつ死ぬわ」という感じになっている

上への移動は「昇天」

てぐすを飼う準備をするときにはしごを登る。ブドリはそこから落っこちて、いくじがないと言われる。てぐすの成虫は天に登るかのように飛んでいく。ブドリは山から里へ、街へと降りていく。汽車で見た夢のなかで、ブドリは人さらいを追いかけて坂を、塔を登る。塔の中のエレベーターを死者が登る。往きと逆に降りていって目が覚める。大学へは階段を登っていく。火山局は切り立った崖の上*3。山の上でブドリはまた夢をみる。あの世の裁判所で、ブドリはせり上がって現れ、逆に下がって退場する。ブドリは冷害を止められるならこの身は溶岩に焼かれて大気の大循環に混ざることになってもいいと言って犠牲になる

*1:むしろそれがいいのだが。原作の空気でラストを口説くすると湿っぽすぎてぶち壊しになりかねない

*2:ブドリの人を助けたいという描写も増えている

*3:ここら辺、原作では立身出世の道なのに対して、今作では死に場所へのロードだなぁ